写真を“選ぶ”ということ──感性と目的に向き合う力

「家族写真コンテストに応募するならどれがいいと思いますか?」

ある方から、写真を選ぶにあたっての相談を受けました。何度かやり取りを交わしましたがその中には、「どれがいいか迷っていて、誰かに決めてもらいたい」という本音が垣間見えました。確かに写真を選ぶことはとても難しく、どれが多くの人に評価されるのか?“良い”写真はどれなんだろうか?という気持ちを持ってしまう事はとても共感できます。しかし、ここはあえてちょっとだけ厳し目のアドバイスをさせていただきました。

写真を選ぶのは、誰かの“正解”じゃない

「この写真が一番いいと思います」
「でも、◯◯が顔にかかってるし、手も机に置いたほうが…」
「この写真が自然で良いと思ったけど、目線が合ってないかも…」

こういったコメントを読んでいて思ったのは、写真そのものよりも、選ぶことに自信が持てないという葛藤でした。

けれども、私は思うのです。

写真を選ぶという行為そのものが、その人の感性であり、作品の一部である。だからこそ、私が「これが良いと思うよ」と言ってしまえば、それはもう秦野(私)の写真になってしまうのではないかと感じます。

アドバイスを求める前に、自分の「好き」を言語化しよう

これは写真だけの話ではないかもしれません。

アドバイスを求めるときに、「どれがいいと思いますか?」と聞くよりも、「私はこれが良いと思いました。その理由は〇〇だからです」と伝えた上で、「どう思いますか?」と聞いてみる。そうすることで、アドバイスをくれる人も、あなたの視点を尊重しながら答えやすくなります。それは、自分の意思を持つことが、他人の意見を活かすための第一歩になるということです。

記録なのか、作品なのか

また、今回の写真選びの話で印象的だったのが、記録としての写真か、作品としての写真か?という視点。

記録であれば、多少構図が乱れていてもOK。だけど、「応募する=人に見せる前提の作品」となると、構図や表情の印象が重要になってきます。

例えば今回の私の選定基準で言えば、
・表情が豊かであること
・感情が伝わること

この2点が大きなポイントです。

ですが、それも「私の場合」。

最終的にはやっぱり、「あなたが何を届けたいか」によるのです。

写真を撮る前に、撮った後に、自分に問いたい3つのこと

1. これは何のための写真?(記録?応募?誰かに見せたい?)
2. 自分はこの中でどれが好き?
3. なぜそれが良いと思った?

この3つを考えることは、単なる写真選びを超えて、「自分の感性と目的に向き合う」行為そのものです。

写真を通じて、自分自身の視点に気づいていく──

それが、写真を撮ることの本当の面白さなのではないでしょうか。

まとめ

写真を選ぶという行為は、ただの作業ではなく、自分の感性や目的と向き合う大切なプロセスです。他人の意見を参考にすることはあっても、最終的に「自分はどう感じたのか」「なぜそれを選んだのか」を言語化することで、その写真は初めて“自分のもの”になります。記録として残すのか、誰かに伝える作品とするのか。その目的によって選び方も変わります。写真を通じて、自分の視点を大切にする力を育てていきましょう。